2016年 日本放射光学会 各表彰受賞者について

2016/01/10

2016年 日本放射光学会が贈呈する各表彰の受賞者についてお知らせします。

日本放射光学会
会長 石川哲也

第20回 日本放射光学会奨励賞

片山 哲夫 会員 (KATAYAMA Tetsuo)
高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室
X線自由電子レーザーを利用したフェムト秒X線分光法の開発
受賞理由
 片山哲夫氏は超高輝度光源であるX線自由電子レーザー(XFEL)を用いたフェムト秒X線分光法の開発における諸問題を解決し、超高速放射光科学の発展に大きく貢献した。
 現行のXFELは自己増幅自発放射(SASE)と呼ばれる方式を採用しており、その超短パルス特性と幅広いスペクトル幅を活かした超高速放射光科学の開拓が期待される一方、SASE方式に特有の強度・スペクトルのランダムな揺らぎの存在によってその利用が制限されている。片山氏は、透過型回折格子とビームスプリッターを用いてこれらの揺らぎをダイナミカルに補正する手法を考案し、フェムト秒光学レーザーと組み合わせてシングルショットで10フェムト秒時間分解X線吸収分光を行う道を切り拓いた。この研究報告を契機に、XFELを用いた世界的な超高速分光の開発競争が始まっている。
 またアメリカ・スタンフォードのLCLSにおいても世界初のサブピコ秒時間分解軟X線発光分光測定を成功させる立役者となっており、その後のXFELを用いた表面分光研究の発展に寄与している。
 以上のように、将来の放射光サイエンスに大きな影響を与えた片山氏の業績は日本放射光学会奨励賞に十分に値するものであり、今後の光源開発に追随してさらなる成果を挙げることを期待するものである。

受賞研究報告 学会誌 Vol.29 No.2 (2016)

河口 智也 会員 (KAWAGUCHI Tomoya)
京都大学 産官学連携本部
回折XAFS法の開発とその電池材料解析への応用
受賞理由
 河口智也氏は、京都大学大学院工学研究科材料工学専攻の大学院生として革新型蓄電池研究拠点(RISING)における専用ビームラインの建設とその立ち上げに深くかかわった。完成したビームラインを利用してLiイオン二次電池正極の充放電サイクルに伴う構造変化のヒステリシスと蓄電池性能、および劣化の機構を明らかにするために、正極物質を構成するカチオンのサイトを区別した構造とLiイオンの挿入脱離に伴うカチオンの価数変化の同時計測が可能な回折XAFS法(DAFS法)に着目し、簡便で高速な実験手法の確立と、従来のような反復法を必要としない実験データのみに基づく結果の曖昧さを最小限にした独創的な解析法の開発に成功した。河口氏は、DAFS法を他分野の研究者でも簡便に利用するための試料調整法から、測定法、解析ソフトまで一貫して整備し、XAFS分野の汎用性、有用性を飛躍的に高めるとともに研究者コミュニティーの裾野を大きく広げた。さらに、このような放射光分析法自体の開発のみならず、これを利用することによって、Liイオン二次電池の長年の課題であったカチオンミキシング問題に対して実験結果に基づく鮮明な描像を提案し、今後の二次電池電極材料を開発する上で重要な知見を与えた。
 以上のように、河口智也氏の成果は高く評価でき、本学会奨励賞の授賞に値する。

受賞研究報告 学会誌 Vol.29 No.2 (2016)

第3回 日本放射光学会 功労報賞

該当者なし